* The Third day *





**朝

[ それでも朝は来る ]

ナ: 皆さん、ちょっと宜しくて?
ル: 何だよナタリア、改まって。
ナ: 皆さんさえ宜しかったら、私、一度バチカルへ戻りたいのですけれど。
ア: ふえ? 何で何で? 何か用事?
ナ: いいえ…ただ、現在の進捗状況をお父様に御報告した方がいいと思いましたの。先日…もののついでではありましたけれど、ピオニー九世陛下には謁見をして、御報告しましたでしょう?
ティ: そうね、名案だと思うわ。それにルーク、あなたも一度お父様やお母様に元気な姿を見せるべきだと思うの。
ル: バチカルかァ…そういや随分戻ってねェな。
ガ: いいんじゃないか? ナタリアの言う事もティアの言う事も筋が通ってる。ただ、あんまり長居してもいられないだろうがな。
イ: 僕も賛成です。インゴベルト陛下も心配なさっているでしょうし。
ナ: では決まりですわね! …大佐は如何お思いですの? 先程から何も仰いませんけれど。
ジェ: 私は特に。強いて言えば、ガイの言う通り長居は出来ない事ぐらいでしょうか。
ナ: それぐらい判っていましてよ。全く…ガイ! あなた最近大佐に似てきていますわよ!
ア&ティ: !!!
ナ: …あら、私何かおかしな事言いまして?
ティ: えっ、あ、いえ…そんな事ないわよ。
ア: そっそうそう! ね、ルーク!
ル: え、俺!? う〜ん…ていうかこの二人って元々似てると思うぜ? 最近確かによりそんな気はするけど…。
ティ: アニス!
ア: うわわわっゴメンってばァ! もー…ルークのバカっ!!
ル: 何でだよ!
ア: バカバカバカバカーっっ!!
ナ: ……わけが判りませんわ。
ティ: 知らない方がいい事も…あるのよ。
ナ: ??
ティ: さ、とにかくこの後バチカルへ行くのでしょう?
ル: あ、あァ…そうだったな。
ナ: "そうだったな"ではありませんわ! しっかりなさいルーク!
ル: また俺!?
ガ: …若いなァ…。
ジェ: …全くですね…。





**昼

[ バチカルにて ]

ル: じゃあ、伯父上への取次ぎはナタリアに任せるとして…説明とかはジェイドとガイがやってくれるか?
ティ: ルーク! そんな他力本願な事言ってないで自分でやったらどうなの?
ル: えー、だってさ、俺が説明するよりジェイド達がやった方が判りやすいし、短く済むだろ?
ティ: そ、それは…。
ナ: 私もルークの意見に賛成ですわ。ガイ、頼みましたわよ。
ジェ: …こうまで言われたらやらないわけにはいきませんね、ガイ?
ガ: …知らねェぞ…。


[ そして謁見の間へ ]

イ: インゴベルト陛下、御無沙汰しております。イオンに御座います。
インゴベルト陛下(以下:陛下): ナタリアから聞いた。わざわざの足労、感謝する。
ナ: お父様、説明は大佐とガイが致しますわ。
ジェ: マ、マルクト帝国軍第三師団…しだ…師団、長……ジェイド・カーティス大佐です。
一同: (……!?)
ジェ: 詳しい説明は…ガイ、お願いしますよ。
ガ: はァ!? 何でいつも俺なんだよ…アンタの方が事情には詳しいだろう?
ジェ: ……。
ガ: ……。
ジェ: ……ま、まァいいでしょう。では、僭越ながら私の方から御説明しましょう。
一同: ……。


[ 終わったよー ]

ル: 何つーか…ジェイド、今日はどうしたんだ?
ジェ: なっ、何がですか?
ル: だって自分の所属とかで噛んでたし、珍しくガイに言い負けてただろ?
ア: そーですよ! 大佐らしくなァーい。
イ: …ジェイドは昨夜遅くまで調べ物をしていましたよね?
ティ: そうよ! 最近ちょっと旅も強行軍だったし…ねえ、ナタリア?
ナ: そう言われればそうですわね…流石の大佐もお疲れのようですわ。
ガ: …ま、珍しい旦那の姿を見られただけでよしとしようや。
ア: うっわァーガイ余裕ー。
ジェ: ……ガイ…。
ガ: おっと。これは失礼、大佐殿(にやにや)





**夕方

[ アルビオールにて ]

ノエル(以下:ノ): 皆さん、お帰りなさい! …あの…少し困った事が…。
ル: ん? どうしたんだ、ノエル?
ノ: はい…少し前からアルビオールの調子が思わしくなくて、一応私も機構などは一通り学んだので整備しようとしたのですが…。
ジェ: 不具合の原因が判らない、と?
ノ: ええ…それで困ってしまって…。
ル: ふーん…なァガイ、ちょっと見てやれよ。お前こういうの得意だろ?
ガ: …あァ…けど、俺はアルビオールの細部なんか知らないぞ?
ノ: それは大丈夫だと思います。アルビオールの基本構造は、音機関の中では単純な方ですから…。
ジェ: …み、見てあげたらどうです?
ガ: …判ったよ。じゃあ皆は宿にでも行って待っててくれ。ジェイドは一応、理論は理解してるんだよな? 手伝ってくれよ。
ジェ: …やれやれ、仕方ないですね。
ア: じゃあ私達はバチカルの宿屋に行ってるね! ノエルも行こう!
ノ: え、あ、私は…
ガ: 大丈夫だよ。もし判らない事があったら訊きに行くからさ。
ノ: ……判り…ました。アルビオールを宜しくお願いします。


[ 取り敢えず挑んでみる ]

ジェ: ……すっげェ…内部は初めて見たが…こんな高度な技術が…
ガ: …感心している間にちゃっちゃと直せ。暗くなるとまずいだろ。
ジェ: …いいじゃねェかちょっとぐらい…。
ガ: それはそうと、ガイ、
ジェ: Σ! なっ、何でしょう…?
ガ: いやですねェ、判っているくせにィv
ジェ: ―――――っっ!!(怖)
ガ: …ま、その話は後ほどゆっくりたっぷりする事にして…直せそうですか?
ジェ: うーん…ここんとこのコネクタの負荷が大きすぎるから、ここら辺の遊んでるやつに分散させりゃいいと思う。…工具あるか?
ガ: どうぞ。
ジェ: …あァ、こんだけありゃ何とかなる。大丈夫、直るよ。
ガ: ほう…大したものですね。音機関"偏執狂"も役に立つという事ですか。
ジェ: ………。
ガ: おや、反論はなしですか?
ジェ: 今のアンタに勝てないのは判りきってるからな。
ガ: ははは、失礼な人ですねェ。大正解ですよ。
ジェ: ……(溜息)





**夜

[ バチカルの宿ですよ ]

ア: ええェーーーっ!! 本当に直しちゃったの!?
ガ: あァ。機構そのものに問題はなかったんだが…多分計算以上の負荷が一点に集中したのが原因だと思う。
ジェ: ……。
ノ: あ、有難う御座いました! 私…何て御礼を言ったらいいか…。
ガ: はは、気にしなくていいよノエル。予想外のトラブルってのは、逆に専門家には判りにくいものだからね。
ア: うーわ何か気障な事言ってるー…ねー大佐、どう思います?
ジェ: そっ、そうですね。
ア: ……?
ガ: そんじゃあ俺らは部屋に戻るよ。旦那が珍しく音機関についての講義をしてくれるらしいから。
ジェ: !?
ア: そっかー…判りました。ほどほどにしてあげて下さいよ、大佐?
ガ: じゃあまた明日な。
ノ: ええ。皆さん、お休みなさい。


[ 二人部屋です ]

ガ: …さて。何か言いわけはありますか?
ジェ: ……ありません(小声)
ガ: 全く…あれほど、私が、何度も何度も、復唱させたというのに、あなたは。
ジェ: …言葉もありません(小声)
ガ: しかもあの程度で言いくるめられないで下さいよ…。本当に、あなたは私の何を見てきたんですか?
ジェ: ……ゴメン…。
ガ: ガイ?
ジェ: ゴメン…ジェイド。アンタは"俺"を完璧に演じられるぐらい俺を見ててくれたのに…何て言うか…俺は…全然ジェイドの事見てなくて判ってなくて……ゴメン…。
ガ: ……。
ジェ: 見てた…見てたつもりだったんだ。でも、本当は全然、ちゃんと見えてなかったって、思い知らされた。…っ…好き…なのに、その…ちゃんと…俺は……
ガ: もう…もう、いいです。何も言わないで、判りましたから。そこまであなたを傷つけるつもりは…なかったのですが。
ジェ: …ゴメン…ジェイド…本当、ゴメン……。
ガ: まァ…その、嬉しいですよ、あなたがそんなに私の事を想ってくれていたなんて。私の独りよがりではなくて、ほっとしました。
ジェ: っ……ばかやろ…っ!
ガ: ええ、それでも私はあなたが好きなんですよ。








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