雪雲の重い朝だった。
 詰襟の上からマフラーを巻いて、溜息のように吐き出した息は白い。
 いよいよ本格的に冬が始まった、という感じだ。
「雪、降るかな」
「んー……今日は降らないんじゃねぇ?」
「雪は、嫌いだよ」
「……ん、知ってるよ」
 いい加減聞き飽きるほど、こいつはこの季節になるとこの台詞を言う。
 曰く、雪は融けてしまうから嫌いらしいが、正直、俺にはよくわからない。
 もう何度目になるだろうか。
 こいつの隣で過ごす冬は。
「今年は寒いって」
「毎年そう言ってるよ」
「……俺は、雨の方が嫌い」
「知ってる」


 ―――――何となくわかってる。
 この日々の終わりはもう目の前にあって、隣を歩くこいつの姿だって、いつかは変わってしまうのだ。
 雪融けが必ず訪れるように、それはとても自然で、どうしようもないことなのかも知れない。
 それでも―――――思ってしまう。
 なるべくなら変わらぬようにと、願ってしまう。


「……雪、降るかな」
「……さァな」


 そうして、しんしんと冬は積もっていく。






(雰囲気5詞:雪/04.花びらはやがて消えて)
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