『世の中には、余り深入りしない方がいい事も沢山ある』
(ある日のルークの日記より)










 ジェイドは時々(寧ろいつも)よく判らない行動に出る。

「…ジェ、ジェイド…お前それ…」
「おやルーク。私がどうかしましたか?」
 にっこり、というにふさわしい笑顔でジェイドは言い、その有無を言わさぬ圧力にルークは思わず後退った。
 服装はいつもと同じなのに、左肩の所で小さく結われた髪にはピンク色の花飾り。
 緩く結った色素の薄い髪に、その色彩は無言で強大な存在感を醸していた。
「おーいルーク、何固まってるんだよ?」
「ガ、ガイ! 大変だジェイドが…っ」
「ん? 旦那がどうかしたのか?」
「どうかしたのかじゃねェよ! おかしいだろあれ!!」
 あれ、と言ってジェイド…の髪飾りを指す。
 ガイはルークの指す先を見るや、苦笑にも似た曖昧な笑みを浮かべた。
「気に入ったんだと」
「え?」
「というか、あれ結ったの俺だし」
「えェ!?」
 何だかもう言葉もないルークは二人の顔を交互に見る。
 この場合自分はどうすればいいのだろう、と考える。
 本当にもう、どうしようもない。
「ジェイド、花曲がってるぞ。動くなよ」
「あァ、これはどうも」
 さも当たり前のようにガイは言い、ジェイドの髪に手を伸ばす。
 ジェイドはジェイドで意味もなくガイの髪に指を絡め、何故かガイもそれを咎めようとはしなかった。
「アンタの髪細いから結びにくいんだよ」
「あなたは器用ですから、何て事はないでしょう?」
「…いっぺん自分でやってみたらどうだ?」
「いやですねェ、あなたに結ってもらう事に意味があるんですよ」
「…ったく……ん? どうしたルーク?」
「………何でもないよ」
 二人から目を逸らすようにしてルークは呟き、これ以上何かが起こる前にこの場から去るべく急いで踵を返した。















(咲花詞)


髪の結い方はリゾートキング式です。