約束をしよう。
もっともっと違うあなたを見たいから。










 背後からかけられた聞きなれた声に、ナカジは足を止めて振り返った。
「ナカジ君」
「…ミシェルさん?」
 どうしてここに、と言外に問いかけ、ナカジはやや低い所にあるミシェルの顔をまじまじと見る。
 膝まである黒いロングコートを着ているが、釦を留めていない襟元から覗く服装は恐らくいつもと同じもの。
 荷物らしい荷物は持っていないが、A4サイズと思しき封筒を脇に抱えていた。
「郵便局にいくのを忘れててね、今から行く所。ナカジ君は学校の帰り?」
「あ、ハイ…今日は短縮授業だったので」
「そっか」
 ほわんと微笑んでミシェルは言う。
 言葉を交わす度に一瞬空気が白く染まり、冷えた空気が頬を撫でた。
「寒いね」
「そうですね」
 短い言葉の合間にどちらからともなく歩き出す。
 郵便局に向かっているのであろうミシェルに、当たり前のようについて行くナカジ。
 ミシェルは何も言わなかった。
「雨が降ると、図書館の傍の公園に大きな水たまりが出来るんです」
 寒そうにマフラーを口元まで上げて。
「この間通りかかった時、そこに映った空がとても綺麗で、」
 言いながらナカジは空を仰ぐ。
 晴れ渡り、深く澄んだ冬の空。
「今度、散歩がてら一緒に見に行きましょう」
「散歩がてらって…」
「…こうして歩くのもいいなと、思ったんです」
 相変わらず空を見上げたままそう言うナカジに、ミシェルは思わず足を止めた。
 数歩先の背中をじっと見て、そうして今度は零れるように笑った。
「ミシェルさん?」
 振り返ったナカジが問う。
 今度もミシェルは何も言わなかった。
















(空面)


ナカミ第二弾。相変わらずSSSにしかなりません;
この二人は落ち着いたイメージ。ナカミっていうか、ナカジ+ミシェル、みたいな感じ。ほんわか。