「差し入れです」 コン、とカウンタの上に置かれた缶と、それを置いた張本人の顔を交互に見やる。 日の暮れかかった茜色の室内。 いつもながら静かだ。 「館内は飲食禁止だよ?」 「知っています。だからこれは、あなたに」 これ、と言って指すのは某有名缶紅茶。 よくある350mlよりも少し小さく、全体のデザインが白を基調にしている事からミルクティーだろうなとミシェルは思った。 そっと缶を手に取る。 少し冷めてしまっているようだが、それでもほのかなぬくもりは確かにあった。 「ミルクティー、好きじゃありませんか?」 「あ、ううん、そんなことないよ」 慌てて頭を振って否定を示す。 すると途端に安堵を見せたナカジに、つられるようにしてミシェルも微笑んだ。 「そうだ。ナカジ君、今日は時間ある?」 「え? ええ……はい」 「ごはん、食べに行こうか」 「………え?」 缶を両手で包んでそう言えば、ナカジは意味がわからない、といった風に声を上げた。 「…何か、そういう気分なんだ。…駄目、かな?」 「いえ! 喜んで!!」 勢い込んでナカジが答えれば、ミシェルはとても嬉しそうに笑った。 手の中の缶をカウンタに置く。 ナカジは意味もなくそのラベルをじっと見つめた。 「差し入れありがとう」 「喜んでもらえたようでよかったです」 「…閉館まで待っててね」 「はい」 律儀に一礼して踵を返したナカジの背を目で追う。 思い出したようにミルクティーの缶を手に取れば、それはまだほのかにあたたかかった。 (allow) ほのぼののんびり。いつでもこんな、花飛んでそうな感じです。 イメージは、ホットロイヤルミルクティー。どちらかというと、午後の紅茶。 |