じっと画面に向けていた視線を逸らし、一つ伸びをすれば肩の骨が嫌な音を立てた。
 集中していた時には感じなかった重い疲労感がどっと押し寄せ、僕は結局、作業が中途半端なままにノートパソコンを閉じた。
 先刻まで細っていた感覚が一気に戻ってくる。
 殆どモノクロだった世界は漸く色を取り戻し、断絶されていた音が波のように静かに押し寄せる。
 疲れているな、と、もう一度改めて認識した。
「あー……痛い」
 二三度とまばたきを繰り返し、思わず一人ごちる。
 痛い。痛い。
 ぎゅっと強く目を瞑り、そっと指先で瞼を撫でる。
 こういう時、コンタクトじゃなくてよかった、と結構本気で思う。
 目は開けないまま、手探りで机上を探る。
 何枚かの紙片が床に落ちた気がしたけれど、取り敢えず気にしない事にした。
「………あ、あったあった」
 指先に触れたプラスティックケースを摘まみ上げ、弾くようにして蓋を開ける。
 青い容器は涼しげだけれど、今は見えないので関係ない。
 仰ぎ見るように真上を向いて、目薬を点したら珈琲を淹れよう、と僕は思った。








(014.ドライアイ)




いい短さで収まったような、何のオチもないような。