「結局、これが僕らの距離なんだ、と、思うよ」 「曖昧」 「うん、そう。けれどそれこそが、きっと丁度いいんだよ」 「……酷く勝手だけれど…あなたは拒絶も許容もしない人だと思っていたわ」 「………君がそう思うのなら、或いはそうなのかも知れないよ?」 「違うの。そうじゃなくて……そう、あなたは、肯定をしないんだわ」 「肯定、を? どうしてそう思うの?」 「傷つかない為の――――つまり、傷つけない為の、方便でしょう?」 「…言っている意味が、判らない」 「そうね。けれどそれが、私達にとっては必要な距離なんだわ」 「――――君は、」 「いいの」 「……これ以上も、以下もないのかな」 「ないわ。きっと、この瞬間だけが唯一で全てで……一番終わりに近い所なのよ」 「終わりを求めるのは、その時が怖いから?」 「判らない。ただ、求めているからこそ、私はこんな風にいられるのだと思うわ」 「僕はきっと君から一番遠い所でそれを見ているよ」 「……そうね。こんなに近いのに……遠い、のね」 「それが僕らの距離なんだ。どうしても必要で、最高に無意味な」 触れた合った背が静かに震える。 それでも、彼女は僕から一番遠い所にいる。 (011.背中合わせ) 相変わらず状況の判らない文章で申し訳ないですが、こういう会話ばっかりの文章は書いていて楽しいので好きです。 |