* The Seventh day *





**朝

[ 冷静な人々による事態の学術的考察 ]

ナ: それにしても驚きましたわ…
ア: ほーんと! 何か未だに信じられないよ。
ティ: 私は気付いていたけれど…あの二人の演技力には驚かされたわ。
ア: もーティアもイオン様も、一体いつから気付いてたんですか?
ティ: 私は…そうね、グランコクマに行った時かしら。
ナ: まあ! そんなにも前から気付いていましたの?
ティ: 勿論、私だって手放しで信じたわけじゃないわ。
ア: イオン様はどうなんですか?
イ: 僕もティアと殆ど同時期です。…ただ、元々はジェイドの音素が急に不安定になった事に注視しただけだったのですが。
ティ: 今は随分安定してきたけれど、それでも不安は残るわ。ガイは元々譜術士ではないし、大佐には譜眼があるでしょう?
ア: …あのー…話が見えないんだけど、つまり、何が問題なの?
イ: 強大に過ぎる力は身を滅ぼすと言いますが、正にそれです。よくて防衛の為に昏睡、最悪…肉体と精神が乖離して死に至る可能性があります。
ナ: そんな……
ティ: それだけじゃないわ。人は本来、肉体と精神が揃ってこその一固体。今のあの二人は…合わないピースを無理にはめ込んだパズルのようなもの。…いつ、 壊れてしまうか判らない。
ア: それってマジヤバじゃないですか!
イ: だからジェイドも僕らに話す気になったのでしょう。
ナ: 何か…身体に変調をきたしたのでしょうか?
イ: 先に何か起こるとしたらガイの方だと思います。ええと…ガイの精神、ですね。…杞憂であればいいのですが…。
ア: はわあ…大佐があんまりにもあっさり言うから全然大した事ないと思ってたのに…。
ナ: 私もですわ…そもそも、どうして二人が入れ替わってしまったのでしょうか?
イ: …詳しい事は判りませんが、少なくとも、二人は互いにとても近しい存在なのでしょう。
ナ: あの二人に血縁関係があるという事ですの?
ア&ティ&イ: ……。
ティ: そ、それはないと思うわ…。
ナ: あら、それではどういう意味ですの?
イ: 二人はああ見えて互いをとても信頼し、尊重しています。だからこそああして、僕らに心配をかけまいとしたのではないですか?
ナ: ……いたたまれませんわ、何も出来ないなんて…。
ティ: ええ…本当に…。
ア: ……イオン様。
イ: 何ですかアニス?
ア: イオン様、本当はもう一つ気付いてるんじゃないですか?
イ: ……はは…。


[ 未だに混乱している一人と一匹による大騒ぎ ]

ミ: 御主人様、大丈夫ですの?
ル: あー…全ッ然眠れなかった…。
ミ: 皆さんはもうお食事中ですの。御主人様も行くですの!
ル: …あの二人は?
ミ: みゅ?
ル: ジェイドとガイだよ。
ミ: みゅう〜ボクは見てないですの…。
ル: …そっか…何か信じらんねェよなァ…あの二人が…。
ミ: ジェイドさんがガイさんでガイさんがジェイドさんですの! ボク、全然気付かなかったですの。
ル: 俺も。…ったく、水くさいよなァ…二人とも。
ミ: ジェイドさんもガイさんも、きっと皆さんに心配をかけたくなかっただけですの。とっても優しい人ですの。
ル: それが水くさいっつってんだよ。…どうすんのかな…アイツら。
ミ: 御主人様はガイさん達が心配ですの?
ル: そりゃあな。人間の中身が入れ替わるなんて普通ありえないだろ? 心配っつーか…驚いたよ、マジで。
ミ: 御主人様…元気出すですの! 飛び散れ!! ですのっ!
ル: なっ…お前っ、まだそれ言ってんのか!
ミ: みゅううぅうぅぅ〜だってガイさんも言ってたですの。御主人様は…
ル: ガイってどっちだ! 外身ガイか? 中身ガイか!?
ミ: 御主人様怖いですの〜…。
ル: いいから答えろブタザル!!
ミ: みゅっ、ボクはジェイドさんの喋り方をするガイさんから聞いたですの! 本当ですの!
ル: …って事はジェイドの奴…!
ミ: 違うですの! ボクはガイさんから聞いたんですの!
ル: だからそのガイの中身はジェイドだったんだっつーの!
ミ: みゅうぅ〜・・・でもその時ジェイドさんはいなかったですの…。
ル: だあぁああっ! だァから、お前にわけ判んねェ事吹き込んだのはガイだけどジェイドで、その時ジェイド…っつーかガイはその場にいなかったってだけだろ!
ミ: ボクはあんまりジェイドさんとお話した事ないですの!
ル: 知るか!
ミ: みゅううぅうぅぅ〜。
ル: ったく…。
ミ: …御主人様、
ル: ンだよ。
ミ: 御主人様は本当に飛び散れ!! って言われると幸せになるんですの?
ル: 黙れブタザル。


[ 当事者のはずが一番平然としている二人による結論 ]

ジェ: …ガイ、起きて下さい…ガーイ。
ガ: 何だよジェイド…もう少し…
ジェ: 起きないと襲っちゃいますよ?
ガ: 起きマス。…って、あれ?
ジェ: おはようございます、ガイ。
ガ: え、…俺? アンタ…ジェイドか?
ジェ: 生憎私はあなたの交友関係に私以外のジェイドという人がいるかどうかまで知りませんが…ま、少なくとも私はジェイドですよ。
ガ: ……。と、とにかく…元に戻ったのか!
ジェ: そのようです。…結局、原因は判らずじまいでしたね。
ガ: いいよそんなの! よかったー…一時はどうなる事かと思ったよ。
ジェ: ええ…そうですね、本当に。
ガ: …珍しいな、旦那がそんな事言うなんて。
ジェ: …あなたには詳しく言っていませんでしたが、本当は、私達は二人ともとても危険な状況にあったのですよ。
ガ: …どういう、
ジェ: ま、それは追々話すとして…ガイ。
ガ: 何だよ?
ジェ: 抱き締めさせて下さい。
ガ: っ…アンタはまたそういう……っ、
ジェ: 問答無用!
ガ: う、わっ! ちょ…なら訊くなよ!
ジェ: …やはりこの方がいいですね。
ガ: …そう、だな。
ジェ: キスは?
ガ: 訊くなばかっ!
ジェ: ……。
ガ: ……。
ジェ: …この歳になると、とかく失う事を怖れてしまいます。
ガ: へえ…アンタでもそうなのか。
ジェ: 言ったでしょう? "危険な状況にあった"と。
ガ: 俺には楽しんでるようにしか見えなかったがな。
ジェ: ふむ…勿論楽しくもありましたよ? 貴重な体験でした。
ガ: …アンタな…
ジェ: 何より、あなたの事が好きだと再確認出来ましたし。
ガ: っ…
ジェ: あなたは? どうなんです?
ガ: ………あァくそ、俺もだよ!
ジェ: それは何よりです。
ガ: …って、どさくさ紛れに圧しかかってくんなっ!





**夜

[ エピローグ sideA ]

ナ: お二人共、身体は大丈夫ですの?
ア: そうだよう! 何か変な感じーとか、ないの?
ガ: …大丈夫ですよアーニスv ナタリアも、心配してくださってありがとうございます。
ル: …判っちゃいるが…凄ェ違和感。
ジェ: はははっ、そりゃあな。何だったら、今まで通り演技を続けましょうかルークv
ル: やっ、やめてくれ…判っちまった今となってはその方が不気味だ…。
ティ: ルーク! そんな言い方しなくてもいいでしょう? 大変なのはガイたちの方なんだから。
ル: わ、判ってるっつーの!
ガ: あなた方にも…特にティアには、迷惑をかけてしまっていますね。
ティ: え……?
ル: そんなのはいいよ。…それより、お前は自分の心配しろって。
ナ: ルークの言う通りですわ。いつ、何が起こるか判りませんもの。
ティ: ……。
ル: ティア?
ティ: あ、いえ…何でも…ないわ。
ア: それにしても…こうやってみると喋り方は正反対だね、大佐達。
ジェ: そうだな。…特に、ジェイドの旦那が俺の口調なんて…な。
ガ: …ガイ、何か言いましたか?
ジェ: いいえ何も?
ナ: ふふ、不謹慎ですけれど、何だか面白いですわね。
ア: ねーv 流石大佐、って感じもするけどー。
ジェ&ガ: アーニスv
ガ: 何か言いましたか?
ア: うわ、きもっ!


[ エピローグ sideB ]

イ: ティア、ちょっと…
ティ: ? 導師イオン、どうかなさいましたか?
イ: ジェイドとガイの事ですが…あの二人、どうやら元に戻っているようです。
ティ: え!? そう…なのですか?
イ: はい。昨日まで不安定だった音素が安定しています。完全ではありませんが…もう心配はないでしょう。
ティ: よかった…でも、それならば何故あの二人は未だにあんな風に…
イ: 大方、ルーク達をからかっているのでしょうね。
ティ: そ、そうですか…あの、この事は…
イ: …黙っておきましょう。…楽しそうですし。
ティ: ………本当にこれでいいのかしら?
















(PANIC-sevendays)


おおお終わったー…!
何かもう最後は“終わらせた”っていう感じが漂いますが、七日間で終わらせると決めていたのでこんな形。
途中の設定やら何やらは九割方捏造です。アルビオールとか音素とか特に。
全体としては辻褄合わせが大変でした。何せこんなにも連続した長い話を書くのは珍しいので…(苦笑)
ジェイガイでルクティアでオールキャラな会話オンリーギャグ話。楽しんでいただけたのなら幸いです(本当に)
最後に沢山沢山ネタと励ましをくれたお友達に感謝! 有難う!!