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 愛だとか恋だとか、そういうものを論じるのは生来得意ではない。わざわざ名前をつけなくたって、そこにあるものはただそこにあって、わざわざ言葉にしなくたって、漠然とわかり合えればそれでよかった。もっと言えば、わかり合えないことさえも、それはそれでよかった。あいまいなつながりは、あいまいであるがゆえにある意味強固で、途切れるだけの明確な理由を探すことはひどく難しい。それは、水平線上における空と海との境界を探すことや、静かに明けていく夜と次に訪れる朝の継ぎ目を見つけることの、途方もない非現実さによく似ていた。
 夜闇は、驚くほどたくさんの夢を抱いてたたずんでいる。眠りの中で見る夢、見果てぬ未来に見る夢、叶わないと知りながらも捨てきれない夢。そんなたくさんの夢を抱いて、夜は明けるにつれて色を増す。(朝になれば、すべて忘れてしまうなんて知らずに。)
 子どもの頃、眠りの中で見た麗しい夢を、翌朝になると鮮明に覚えていられないことがひどく哀しかった。次に眠りにつくとき、その夢の続きを見られることを強く願った。けれど、それが叶うことはほとんどなくて、その願いは反対に、ひどく哀しい夢や怖い夢、つらい何かを思い出させる夢をつれてくる。そういう夢は、望まずともはっきり覚えている。今もまだ覚えている。
 愛だとか恋だとか、そういう感情は、かつて見たはずの麗しい夢にどこか似ている。手を伸ばせばその手をすり抜け、求めればやがて離れていく。明確にしようとすればするほどその輪郭はあいまいになって、やがて望まぬ形でもって再びおとなうかも知れない麗しい夢。そういうものに似ている。だからいつも、俺には言葉が足りない。
 夢を忘れないために、眠りから醒めないことを望むのはひどい矛盾だ。けれど、時にはそれを望まずにいられないときもある。そうすれば、あいつにもっと上手く何かを伝えられるだろうか、と、ひどく非現実的な夢を見る。
 現状に甘んじていられる幸福を思った。それと同時に、そのときの終わりのことを考えようとして、何となくそれがすぐ近くにある気がしてすぐにやめた。






(明けゆく夜の色)
colorful dream→That story is not over