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 移ろい繰り返すもの、そう思えば多少はわかりやすいかも知れない。
 例えば咲いた花が枯れるように、例えば降り出した雨がやむように、世界は移ろいを繰り返している。
 例えば耐え難い痛み。
 例えば認めたくない現実。
 例えばどうしようもない離別。
 そういったものでさえ、やがては記憶の中に埋没してしまう日が来る。
 けれどそれは終わりではない。
 あるいは、何らかの始まりなのだと、僕は思う。
「明日が世界滅亡の日?」
「違うと思うよ」
「そう、それは何より」
「……」
 ひょい、と顔を覗き込んでくるのは、幼少時代からの幼馴染み。
 彼女との付き合いはいっそ腐れ縁とでも言ってしまえそうな代物で、けれどそれはすなわち、僕にとっては次の終わりの可能性だ。
 いつ失ってもいいように――というと実に失礼な話だが――曖昧な距離を保ち続けて久しい彼女は、それでもずっと僕と共にいる。
 理由を訊いたってはぐらかされてしまうけれど、多分、彼女自身にもよくわかっていないのだろう。
「桜が散るよ」
「え?」
「もう来週には散っちゃうって、入学式までもたないみたい」
「……、咲けば散るものだからね」
「ふふ、そうだね」
 彼女の会話のテンポは不思議だ。
 むしろ、僕らの会話というのはどうも、傍から見れば全くもって繋がりの不明瞭なものらしい。
 僕の思考も彼女の思考も、互いに到底理解の及ぶものではないが、その会話の持つテンポに関してのみ、僕らは極めて気が合う。
 すなわち、相手のことなどさして気に留めていない、という点において。
「ねえ」
「うん?」
「来年はもうこうしていられないかも知れないよ」
「そうかもね」
「明日は雨がいいな」
「僕は嫌だ」
 言いながら、僕は彼女から目を逸らすように窓の外を見る。
 薄紅の舞う大樹の向こうに、見えた空は燃えるような茜に染まっていた。








(015.桜花爛漫)




相変わらず特に意味のないお話(と言っていいのかも多少疑問)ですが、僕と彼女の噛み合わない会話を書くのが楽しい感じです。
途中で彼らに名前をつけようかと思ったのですが、まァいいやということで名無しの彼らです。