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 只管に何かから逃げるように、私は螺旋階段を上がり続けた。
 理由は判らない。
 一体いつから上がり続けているのかも判らない。
 けれど、足を止めたらおしまいだ、と、漠然とずっと考え続けていた。

(判らない。判らない判らないわからない―――どうして、)

 何の音もしない、全くの無音の空間。
 確かに踏んでいるはずの石段も、靴の踵も、一切の音を立てない。
 けれど周りの景色は流れていく。
 駆け上がる階段の終わりは見えない。

(嘘ばっかり! どうして、どうして!)

 不意に現れた扉を半ば蹴り開けて、螺旋の中心の建物に入り込む。
 ちらちらと揺れる、蝋燭による曖昧な影と―――嘘のように真っすぐな長い長い廊下。
 一瞬躊躇い、けれどまた走り出す。
 行く先なんか知らない。
 何処から来たのかも、知らない。

(……終わってしまえばいい。そうすれば、少なくとも嘘じゃなくなる)

 ふとよぎったそんな考えに、疲れきっているはずなのに、思わず笑みが零れた。
 真っすぐな廊下は感覚を狂わせる。
 迷いようもない景色の中で、私は明確な喪失感を感じた。








(009.迷走回廊)




 「回廊」という言葉を辞書で引いて、私はずっと意味を履き違えていたのだと知ってしょんぼりしました。
 でももう、このお題はこれでいいような気もします(…)