理解しえない感情ばかりが燻っている。 音もなく拒むように、気配さえなく漂うように。 指折り数えた日々はいつの間にかこの手を離れ、終わってしまった事にも気付かないまま、未だにやむ事なく降り続いている。 終わってしまったのだと、誰かが言ってくれたら。 そうすれば、過ぎ去った日を静かに、波間に埋葬してやる事が出来るのに。 「厭わないままに夜は続いていくの。歌うように日々は積もって、忘れられない何かが穏やかに死にゆくように」 「…どういう意味?」 「意味なんかないの。誰も本質なんて見ていないのだから」 「死にゆく事を、君は厭わない?」 「穏やかならば。願わくは、独りで」 そう言って彼女は微笑う。 酷く透明な、完成された笑み。 それを見るたびにいつも、彼女の中では既に何かが終わっているのだろう、と思わずにはいられなかった。 (005.それはもう過ぎた話) 前半と後半がさっぱり繋がっていません(要反省) 終わってしまった話を、まるでそこにあるかのように書くのは楽しいので好きです。 完成されたものを、まるで未完成のように書くのも好きです |