嘘ばっかり、と言って笑った君の横顔は今でも鮮明に思い出せる。 あの時、嘘じゃない、と嘘でも言えていたら、何かが変わっていたのだろうかと今でも考える。 受け取る人のいない手紙を書きながら、過ぎた日を思う。 感傷に浸ってみた所で、もうあの日々は戻らないのだと知りながら。 (これくらいの距離が丁度いい。…近過ぎればきっと、お互い駄目になってしまうのだから) 忘れない為だけに手紙を書いて、受取人の名前だけを書かないままに封筒ごと破ってやる。 なるべく細かく。何が書いてあったか判らないぐらいに。 どうせまた繰りかえされる事なのだ。 だって、ずっと繰り返してきた事なのだから。 書き始めが苦手だ、といつも言っていた君。 便箋には、"Dear,"とだけ書いてまた破ってしまった。 (003.Dear, my dear.) ……使いにくいお題だなァ… |