澄 -serena-
 声が聴こえた。歌うような。
 或いはただ音なのかも知れない。
 澄んだ空気を震わせて、けれど余韻は遺さず消えていった。
 丸い月を浮かべる夜空は静かに、けれど酷く頼りなげに柔らかく光を降らせている。
 歌うような、声のような、微かな音が遠くから聴こえる。
 そんな夜は外へ出てはいけない。
 あの人は、こんな夜が好きだった。

まばたきの一瞬だけ残る何か。あとはただ消え行くばかりの想いだとか。
そんなものを全て抱えて、澄み渡る空は青くて、蒼くて。
『澄』という字を下さった方へおくります。